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タイ発バンコクな毎日:スペースアルク
 

2010年01月25日

第445話:国王陛下のお見舞い

 すでに年が明けてから3週間以上が過ぎてしまったが、新年最初の日曜日にワタシと相方はあるところに出かけてきたので、今回はその話題を。

 その日は用事があって朝から外出していたのだが、昼前に終わったので、どこかで昼ご飯を食べようと王宮前広場の近くをうろうろしていた。相方が、「船着場のところで食べよう」と言うので、車は王宮前広場に停めて、チャオプラヤ川を移動するボートの船着場に歩いていくことに。平日はどうか知らないのだが、日曜日のこの日、王宮前広場は無料の大駐車場と化していた。

 船着場の正面には屋台が、その横には狭い通路を挟んで食堂が並んでいる。お昼の時間帯ということでどこもものすごい人だったのだが、ようやくある食堂の2階席に座ることができた。相方は、「なんでこんなに人が多いんだろうね」と周りを見ながら、窓の外に目をやり、「あ、そうか!」と何かに気がついた様子。「あれだよ」と相方が指をさす先には、川を挟んだ場所に建つ建物が見えた。シリラート病院である。

 このエッセーでも、過去にプミポン国王が入院されたという話題(第336話)を取り上げたことがあるのだが、昨年の9月半ばから再びプミポン国王は入院されている。82歳というご高齢を考えると、お体の不調を訴えることがあってもまったくおかしくないのだが、敬愛する国王が少しでも早くご回復なさいますようにと、お見舞いの記帳に訪れる市民は後を絶たない。

 相方は、船着場周辺の食堂が混雑しているのは、国王が入院しているシリラート病院にお見舞いに行く人が詰めかけているからと言いたかったらしい。その真偽を確かめるため……ではなく、単なる好奇心から、ワタシたちもお見舞いに行ってみることにした。

hitomi445_a.jpg

 食堂のそばの船着場から、向かい側の船着場までの渡し船は1人3バーツ。船を下りるとすぐ目の前がシリラート病院で、脇の道路には国王の御印の旗が空になびいていた。タイでは曜日のカラーが決まっていて、月曜日生まれの国王は黄色ということになっている。以前は、国王に関する催しがあると、そこに集まる人は必ず黄色の服を着ていたものだが、ここ1~2年は黄服の反政府団体(民主主義市民連合)と、赤服のタクシン元首相派(反独裁民主統一戦線)との対立で政治情勢が混乱しているので、黄色の服を着るとその団体の支持派と勘違いされる恐れがあるせいか、黄色の服を着る人を見なくなった。それにとって代わったのは、ピンク色の服である(第336話)。お見舞いの記帳を受け付ける建物の前には、ピンク色の服を来たおばちゃんたちがちらほら。

hitomi445_b.jpg

 お見舞いの記帳といってもこの場所には厳粛な雰囲気はなく、どこかの観光地を訪れたくらいの感覚で、皆は記念撮影に励んでいた。ワタシも建物をバックに相方の写真をパチリ。そして建物の中に入ると、正面には国王のお母様、シーナカリンタラー王太后の銅像が見えた。王太后はもともとこのシリラート病院に勤める看護婦だったのである。まずはここで、床に手をついて一礼をして、そのあとで両脇に並ぶ記帳台で記帳をする。記帳用のノートの前には職員がいて、いすに座るとさっとノートのページを開いてくれた。ワタシは、「国王陛下の一日も早いご回復をお祈りしています」などと、一言書き添えるものだと思っていたのだが、ノートの中には線が引かれ、「カープラプッタヂャオ(『私』の丁寧語)」という言葉が書かれた後の空白に、自分の名前を書くだけになっていた。自分の名前を書き終えると、職員は、昨年12月5日の国王誕生日に国王が国民に向けて述べられたお言葉が印刷された紙をくれた。この紙の縁取りもこれまたピンク色である。

hitomi445_c.jpg

 ここまで、ワタシは建物内部の写真を撮れないでいたので、他に写真撮影をしている人がいることを確認してから、王太后の銅像の写真を数枚撮った。というのも、警備員が始終訪れる人の様子をチェックしていて、堂々と写真を撮るのがはばかられたからだ。幸いにして写真を撮ることはとがめられなかったものの、警備員は私の後ろに回り、カメラのモニターに映っているのが何なのかを素早く確認していた。

 建物を後にすると、相方がくすくす笑いながらこんな話をしてくれた。ワタシが写真を撮っている間、父娘と思われる2人がこんな会話を交わしていたそうだ。

「お父ちゃん、こんなんで陛下は私らがお見舞いに来たってわかるんかな」
「何言ってるんだ、陛下は病室にいらっしゃるんだぞ」
「なんだあ、監視カメラかなんかでお見舞いに来た人の様子をご覧になっているのかと思ったよ」

 ちなみにこんな発言をしていた娘は小学生ではなく30~40代の大人だったそうだ。本来の国王は雲の上の存在ではあるけれど、テレビでたびたびそのお姿を目にしたり、写真や肖像画となって常に身近にあるだけに、国民にとっては近くて遠い、そして遠くて近い存在なのではないかと思う。

 お見舞いの記帳をしたくても、シリラート病院に行くことができない人たちのために、首相府はオンラインで記帳できるサイトを開設した。このサイトでは、名前の他にお見舞いのメッセージを添えることができる。記帳に訪れる人を撮った写真もあるので、お時間のある人はぜひご覧いただきたい。

(参考)Send your blessings to His Majesty
http://king.ilovethailand.org