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増成ヒトミのタイ発バンコクな毎日:スペースアルク
 

2011年6月13日

第516話:選挙ポスターあれこれ

 この数週間、タイにいらした日本人の方に何回かお会いする機会があったのだが、この方たちに必ず質問を受けたのが、街中の立て看板についてである。7月3日の総選挙を目前にして、バンコクの街中は至るところに各政党の選挙ポスターが掲示されている。ということで、今回はタイの選挙ポスターの話題である。

 日本の選挙運動では、各政党の立候補者をアピールする選挙ポスターは、「選挙ポスター掲示板」の割り当てられた区画に掲示されるものとなっているが、バンコク都では、中央分離帯、歩道橋、郵便ポスト、電話ボックス、バス停、官公庁の塀を除いた場所であれば、どこにでも掲示してよいことになっている(地方での規制は不明)。なので、主に幹線道路の道路脇には、無秩序に選挙ポスターが立てられているのだが、そのポスターのデザインは実に多種多様である。

 日本の選挙ポスターのデザインは、立候補者の顔写真に名前と所属政党、または立候補者のスローガンが書かれているのが一般的で、それはAKB選抜総選挙でもほとんど変わらないと思うのだが、タイでは各政党の政策を詳しく書いて、「自分たちが当選したら、国民の皆さんにはこういうメリットがあるんですよ」と、わかりやすくアピールしている場合が多い。

 下の写真は、右が現政権の民主党、左がタクシン元首相のプアタイ党である。プア(~のために)・タイ党は、タイ貢献党などと和訳されている場合もある。今回の総選挙は、この2大政党の一騎打ちとみられている。民主党のポスターには右側に党首のアピシット首相が、左側にその地区の候補者が並び、「国民のための政策と共に前進していく」という政党のスローガンが書かれている一方、プアタイ党のポスターには、タクシン元首相の実妹、インラック・チナワット氏と、その地区の候補者が並んでいる。ちなみにこのインラック氏、プアタイ党の党首ではなく、同党の立候補者名簿の筆頭に名前が挙がっている人物である。タイの選挙は比例代表制、拘束名簿式なのである。

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 下の写真は、右が民主党連立政権に参加するチャートタイパッタナー党(タイ国民発展党)、左が昨年発足したばかりのラックプラテートタイ党(ラック=愛する、プラテートタイ=タイ国)の選挙ポスターである。チャートタイパッタナー党のポスターには、党首も立候補者も顔を見せず、なぜか大きな自動車のキーが。「皆がマイホームとマイカーを持っている」と書かれたこの看板では、これまで自動車を所有したことがない人が初めて車を買う場合、その代金のうち、10万バーツを政府が負担するという、なんとも馬鹿げた政策がアピールされている。写真はないのだが、これの住宅バージョンでは、初めて住宅をローンで購入した場合は、最初の10年間は金利は1パーセントで、月々のローン額は2,000バーツと書かれていた。タイの庶民の間では、マイホームとマイカーを持って初めて、世間様に恥ずかしくない暮らしのレベルだという意識があるので、そこをうまく突いたスローガンだといえるだろう。ちなみにこの政党の党首はチュンポーン・シラパアーチャー氏といい、スパンブリー県出身の政治家、バンハーン・シラパアーチャー氏(第512話)の実弟である。

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 過去にバンコク都知事選にも立候補したことがある、パフォーマンス上手のチューウィット・カモンウィシット氏は、ポスターでも眉をしかめて人の目を引くのを忘れない。わいろ政治を徹底的に排除していくのが同党の政策とみえて、「政治にはうんざりだ……でも選挙には行かなければ」「私をわいろに反対する野党(の一員)とさせてください」と書かれている。

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 写真で紹介した選挙ポスターはほんの一部で、同じ政党でもデザインやスローガンが違うバージョンがいくつもあるのだが、そんな中でひときわ目を引くのがこのポスター。これは政党の選挙ポスターではなく、「選挙では「投票しない(=NO)」に印をつけましょう」、つまり自分がこれと思う政党や候補者がない場合は、投票しないという欄に印をつけることで、棄権票を投じましょうと促すキャンペーンポスターなのである。ワタシは選挙の投票用紙を見たことがないのでなんともいえないが、いったいどこの誰がそんな運動をしているかというと、黄色をシンボルカラーとする、2008年に空港を占拠した民主主義市民連合(PAD)といえば、ああそうかとおわかりになる方も多いかと思う。右側は、「動物を国会に入れるな」、左側は、「選ぶのが難しい……なぜなら両方とも賢いから?」と書かれているのだが、「動物」というのは、2大政党の立候補者は人間ではなく動物レベルの人たちという揶揄で、「両方」というのは民主党とプアタイ党を指しており、赤のジャケットの水牛はプアタイ党、青のジャケットの水牛は民主党を意味している。日本人の中には、「赤はタクシン派、黄色は反タクシン派(=民主党)でしょう?」と質問される方もいるのだが、黄色は確かに反タクシン派だが、イコール民主党ではなく、現在は反民主党でもあるのである。

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 ニュースではタクシン派のプアタイ党が優勢だと報じられているが、ワタシはこうした報道がされる約1カ月も前からプアタイ党が勝つのではないかとうすうす感じていた。それは、5月の初めにスパンブリーに遊びに行ったときに、地方の殺風景な沿道でプアタイ党のこの看板をいくつも見かけたからだ。

 「タクシンが考えて、プアタイが実行する」
 「『かつての経験者』が支援する」

 今から3週間後には総選挙の結果は出ているはず。果たして予想通りになりますやら――。